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神道のお墓はどんなもの?戒名や作法、参列時のマナーもご紹介
神道のお墓ってどのような形かご存じですか?普段気にしていないかもしれませんが、じつは神道のお墓には特徴があります。似ているお墓である仏式との違いは何か所かあるので、お墓参りの際に見比べてみるとよいかもしれません。神道と仏教、お墓の形状はよく似ていますが、お参りのしかたは異なります。もし参拝する必要が生じたら、マナーを守って故人を思いやりましょう。
今回は、神道についてご紹介いたします。神道の成り立ちやお墓の違い、お参りの仕方などを知っておき、「もしも」の際に備えておくことも必要かもしれません。
目次
神道とは どのような宗教?
神道は日本独自の宗教で、八百万(やおよろず)の神へ信仰することをさします。日本では古来より山や物、人、動物にいたるまで「神」が宿るものだと考えられてきました。この考え方は仏教が日本に来て定着する以前から考えられてきているもので、独自の自然崇拝(アニミズム)の考え方が宗教という形で現れたともいえます。
山や川などのすべての自然に魂や霊がやどり、神の御心があると感じ、信仰し始めたのが始まりです。さまざまな説がありますが、「米ひと粒に7人の神様」という考え方があるように、食料にも神がやどるというのは、ほかの宗教とは異なった独自の視点を持っています。
もともと神道は教祖や創始者はいません。多くの知識人や権力者がさまざまな解釈を唱えて、宗教という形をとったのが神道となります。宗教は本来教祖などの教えを広めるために「教」という文字が使われていますが、神道は明確な教えはありません。そのため、「教」という感じが使われず、「道」という文字がつくといわれています。
神道のお墓は仏教と変わらない?掘る文字や特徴
神式のお墓は、仏式のお墓と一見ほとんど変わらない形状をしています。しかし、よく観察すると細部が異なっています。お寺に出向いた際に見かけるお墓は一般的に仏式で、花などが飾ってありますが、神道は少し異なります。その違いは具体的にどのような点にあらわれているのか見ていきましょう。
神道のお墓と仏教のお墓の違いは?
【仏式】
【神式】
お墓の形状は、神式になると上部がとがった形をしています。これは「三種の神器」である「八咫鏡(やたのかがみ)」「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」のひとつである草薙剣を意味しているとされています。
草薙剣は天叢雲剣(アマノムラクモノツルギ)とも呼ばれるもので、お墓の形状を似せるのは御霊を守って貰ったりするためなどの説が存在します。また、掘られる文字ですが、「~家奥津城」または「~家奥都城」を使用します。「津」と「都」の違いですが、一般的には津を使用します。都の場合は神宮関係者や氏子当人、もしくはその子孫が使います。
「戒名」の代わりに「零号」がつく
仏教では故人がなくなった際に戒名(かいみょう、法号、法令ともよばれる)がつきます。もともと戒名は生前につけられていたものですが、現代では亡くなった後につけられるようになりました。戒名とは基本的に2文字の名前で、実際にお墓に刻まれるのは「院号+道号+戒名+位号」のおよそ12文字前後のものです。
その一方で、神道では戒名はつきません。神道では亡くなった人物は子孫に称え祭られます。そのため、故人の住まいの周辺や子孫たちを守る、いわば氏神となると考えられています。そのため、故人がなくなる前の名前をそのままに、「諡(おくりな、零号とも)」を名前の後に、尊称を最後につけます。つまり「故人名+諡+尊称」となります。
【男性の諡】
【女性の諡】
【尊称】…神としての呼び名
諡は、仏式でいう年齢でつく「信士、信女」の位号に近いものがあるのかもしれません。ただし、諡には「位」は存在しないので、違いに同じではありません。
お墓はどこに建てられる?
神道では、死は「穢れ(けがれ)」と考えられています。死は良くないものとされている神道では、信仰する神のそばに穢れを置いてはいけないという考え方です。そのため、寺院とは異なり、神社の敷地内には墓地が存在しません。お墓を建てる際は神道専用の墓地、もしくは宗教や宗派が自由な墓地を探して立てる必要があります。
神式の墓地はあまり数がないため、共用墓地を選ぶことが多くなります。神社によっては、主体で管理する専用の墓地がある場合もあります。祖霊殿(それいでん)という永代供養が可能な社を所有している神社もありますが、ごく一部に限ります。なかには、信仰している神が異なったり、神道系の別の宗教である場合もありますので、調べる必要があります。
参拝時のマナーは?お葬式時に気をつけること
先ほど少し触れましたが、お供えするものが異なります。仏教では菊などの花を置きますが、神道では榊(さかき)をお供えします。榊は漢字から連想しやすいですが「神の木」と考えられています。1年を通して青々と茂る榊は、神聖な木だと考えられているからです。榊は榊立てに備えておきます。花はお供えしてはいけないという訳ではないですが、花瓶を別に用意してお供えする方がよいでしょう。
また、このほかにお供えするのであれば、神饌(しんせん)を置くとよいです。神饌は神にお供えする食事のことで、御食(みけ)ともいいます。おもに塩、米、お酒がこれに該当します。また、線香は置かないので、香炉はありません。仏教では数珠を用意しますが、神道では何も持たず「二礼二拍手一例」を行います。参拝の仕方は、自宅などの神棚、お墓、神社の方法とあまり変わりありません。
ただし神式のお葬式である、神葬祭から忌明けまでは柏手(かしわで)をするときに、音を鳴らさずにしなければいけません。忌明けはお墓に故人を埋葬する埋葬祭が行われるまで続くので、注意が必要となります。
お墓の形にとらわれない葬儀になりつつあります
クリスマス、大晦日・正月、お彼岸…。昔から八百万の神を信仰してきた日本人にとって、複数の宗教というものは大きな隔たりがあるものではないです。現代では「神仏習合」や独自の視点で宗教を考えている人が多いです。無宗教の人口が多いといわれる日本ですが、神道・仏教ともに日本国内で信仰している方も多く、人によっては複数の宗教を信仰している方もいるようです。
これらのことから、「信仰している宗教に合わせてお墓の形も決まっている」という考え方はやや薄くなっているようです。仏教を信仰していても神道の形のお墓を選ぶ方や、その反対もしかりです。ただし、お墓は1人だけ入ることもあれば、その後の子孫代々と入ることも考えられます。1人で決めてしまうと家族や親せきなどとトラブルになってしまうことも考えられますので、慎重に選ぶ必要があるでしょう。
まとめ
神道は日本人が昔から森羅万象を畏れ、天や地、食物、人物にいたるまで「八百万の神」として祭ったのが始まりです。日本神話と深いつながりがあるので、お墓の形も三種の神器の剣に見立てているとされています。また、お花の代わりに榊をそなえるので、仏式と比べてシンプルな印象を受けるかもしれません。神道では死を穢れとしているので、神社の敷地内にお墓は存在しません。
共同墓地、または神道専用の墓地にお墓を立てる必要があります。お墓参りをする際は「二礼二拍手一例」が一般的です。ただし、厄明けまでは柏手を鳴らしてはいけないので気をつけましょう。近年では複数の宗教を信仰している人が多くなりつつあります。そのため、お墓も好きなものを選べる風潮となっています。お墓を選ぶ際は故人の遺志を尊重しつつ、家族などの意見も取り入れていきましょう。